Toccata 典拠レコード・フォーマットの概要 |
Toccata 典拠レコード・フォーマットは, 標目データを始めとする1件の典拠レコードに必要な情報を1個のMARCレコードにすべて収録することを目的として1982-1983年に開発されました. 標目管理の必須条件といわれる 「を見よ」 参照や 「をも見よ」 参照などの情報も典拠標目と同じレコードの中に収録されています.
典拠管理すべき標目は個人名, 団体名 (会議や音楽祭, コンクールなどのイベントも含む), 国名を含む地名, 統一タイトル, シリーズ, 資料の主題内容を現わす件名などがです.
図書館の目録は一般的に 「記述部」 と 「標目部」 で構成され, 記述部が目録対象資料の指定された情報源からの正確な転記を大原則としているのに対して, 標目部は作成した記述を検索するための手がかり (アクセスポイント, 検索キーなどとも呼ばれます) となるものです. 標目として選択される実体は, 一般的に記述対象資料ごとにさまざまな形で表示されるため, 検索性の向上のために標目は一定の規則によって構築されます. ここで, ある演奏団体を例にとって説明します.
目録対象資料の表示:
Sifonieorchester der Hessischen Rundfunks Orchestra Sinfonica della Hessischen Rundfunks Frankfurt Radio Symphony Orchestra Hessian Radio Symphony Orchestra Radio-Sinfonie-Orchester Frankfurt Frankfurt Radio Orchestra フランクフルト放送交響楽団 ヘッセン放送交響楽団 |
この名前は目録規則によって次のように分析されます.
団体名(記入要素): Hessischer Rundfunk 団体名(下部機構): Sinfonieorchester |
この結果, 標目形は 「Hessischer Rundfunk. Sinfonieorchester」 という形になり, この形が書誌レコードの標目として用いられます. ところがこの形, 上記のような異なる形で出版物に表示されているためにそれらの形でも検索される可能性が大きいので, これらの検索キーからも探索できるようにも何らかの手段を講じておかなければなりません. これが標目管理, つまりはアクセス・コントロールの第1歩です.
標目として目録されるさまざまな実体 (個人, 団体, 事象, 著作 (作品)) にはそれぞれ特有の「面」があります. たとえば, それは個人の活躍した地域や時代であったり, 音楽作品の形式や演奏手段などのジャンル, あるいは創作年代や初版または初演の日時であったり, また事象概念を表現する用語 (一般件名) の説明や使用に関する説明であったりします. さらに標目間相互の関連性 (たとえば, 団体の名前の変遷や件名標目間の相互関係 (上位概念や下位概念など)) も標目のコントロール情報として重要です. これらの情報を記録し, 最新の状態に維持するためにこれまでもさまざまな方法が試みられてきました. しかし, 関連性の複雑さや扱う情報量が増大するに従って手作業方式では維持できなくなることが明白となったのです.
また, 目録規則の改定に伴ない標目形が変更されることがたびたびあり, そのような状況にも柔軟に対処できなければなりません. 目録規則の改定に伴なう標目形の変更は大きな問題で, 書誌ファイルの標目に重大な影響を及ぼすことが知られています. この影響を軽減するためには, 書誌ファイルと典拠ファイル有機的な結合が必要であると考えられるようになってきました.
コンピュータを利用した本格的な標目コントロールの方法は, 1970年代後半にアメリカ合衆国の議会図書館 (LC) が開発しました. この方式は各国の国立図書館等の典拠レコード形式のモデルとなり, Toccata 典拠レコード・フォーマットにも受け継がれています.
1990年代の後半になって出された国際図書館連盟 (IFLA) の勧告によれば, 典拠レコードには次のような項目が必要とされています.
Ø 典拠レコード番号
Ø 標目 (確定標目)
Ø 一般用の注記
Ø カタロガー専用の注記
Ø 「を見よ」 参照
Ø 「をも見よ」 参照
Ø 「を見よ」 参照トレーシング
Ø 「をも見よ」 参照トレーシング
Ø 出典
これらの項目は Toccata 典拠レコード・フォーマットでは次のようになります.
² 001 典拠レコード番号
² Axx 標目ブロック
² Bxx 注記ブロック (一般用の注記, カタロガー専用注記)
² Cxx 関連情報ブロック (「をも見よ」 参照トレーシングを含む)
² Dxx 参照ブロック
² Exx 参照トレーシング・ブロック (「を見よ」 参照トレーシング)
² Fxx 出典ブロック
このように, Toccata 典拠レコード・フォーマットはIFLAの勧告する入力項目をすべて含んでいるのです.
この典拠レコード・フォーマットの大きな特徴としてコントロール・サブフィールドをあげることができます. コントロール・サブフィールドはアルファベットで開始するすべてのフィールド・タグに入力され, フィールド単位の状況に関する情報を提供しています. コントロール・サブフィールド ($w) には次のような情報がコード化されて収められています.
$w コントロール・サブフィールド |
典拠レコードでは, 標目や参照などのデータの修正・追加・削除などが常に発生します. このためレコード・データのフィールドレベルでの管理が必要になります. このフォーマットではコントロール・サブフィールドを用意してその書誌フィールドに関する説明情報や印刷や表示をコントロールするためのデータをコード化して収録しています. このサブフィールドは固定長24文字のデータ要素で, アルファベットで始まる可変長フィールドの最初に入力されています.
このサブフィールドは, アルファベットで始まるフィールドには必須 (M) で, 繰り返しはありません (NR).
|
データ要素名 |
文字数 |
文字位置 |
(1) |
1 |
0 |
|
(2) |
未定義 |
1 |
1 |
(3) |
8 |
2- 9 |
|
(4) |
未定義 |
1 |
10 |
(5) |
1 |
11 |
|
(6) |
1 |
12 |
|
(7) |
3 |
13-15 |
|
(8) |
1 |
16 |
|
(9) |
未定義 |
3 |
17-19 |
(10) |
1 |
20 |
|
(11) |
1 |
21 |
|
(12) |
1 |
22 |
|
(13) |
1 |
23 |
フィールドの状態を示すアルファベット1字コード.
c 訂正フィールド
誤りを訂正した, 最新のものに改正した, または特定のサブフィールドを削除したフィールド. このコードの適用には, コントロール・サブフィールド自身の他のコードの改正も含まれます.
d 削除フィールド
典拠レコードから削除することを予定しているフィールド.
n 新規フィールド
新たに作成したフィールド.
1文字の空白.
そのフィールドを処理した最も新しい日付. JIS X0301 による8桁の数字 (YYYYMMDD).
20090222 = 2009年2月22日
1文字のブランク.
フィールド・データの出典を示すアルファベット1字コード.
a LC (アメリカ議会図書館:
典拠/書誌標目)
b NDL (国立国会図書館)
c NHK
d cat. gen. (カタロガーが作成/翻訳)
f Thematic
catalogs (作曲者の作品目録)
g New Grove
dictionary of music and musicians
h 音楽大事典 (平凡社)
i クラシック音楽作品名辞典
j 岩波西洋人名辞典
k MGG
(Musik in Geschichte und Gegenwart)
l Riemann
z その他 (目録対象資料)
x 適用外
A1Aフィールド:
London Wind Soloists ($w/11=a)
A1Kフィールド: ロンドン管楽ソロイスツ ($w/11=c)
E1Kフィールド: ロンドン管楽合奏団 ($w/11=z)
F00フィールド:
Quintet for piano and wind instruments [SR] / Mozart & Beethoven. 1988,
p1966 <London Wind Soloists (Jack Brymer, clarinet; Terence MacDonagh,
oboe; Alan Civil, horn; William Waterhouse, bassoon)><ロンドン管楽合奏団>
F00フィールド: NHK
1978 <ロンドン管楽ソロイスツ>
F00フィールド: LC
Name auth. n 81-85329 (RETRO), DLC 10-20-81
A5Aフィールド:
Concertos, orchestra; arr. ($w/11=a)
F00フィールド: LC
Name auth. 1977-87 <Bartók, Béla, 1881-1945. Concertos, orchestra>
固有名称や統一タイトルの標目形式を定めるために用いた目録規則を示すアルファベット1字コード.
a AACR
以前の目録規則
b AACR
1
c AACR
2
e 以前に典拠標目となっていた形式
j NCR
1987
z 目録規則には従っていない/目録規則に規定がない
x 適用外 (記述目録規則の標目ではない)
固有名や統一タイトルの形を定めるために用いた目録規則を示すコード.
A5Aフィールド:
Quartets. strings, H. III, 75-77 ($w/12=c)
E5Aフィールド:
Quartets, strings, op. 75. No. 1-3 ($w/12=z)
E5Aフィールド:
Quartets, strings, no. 75-77, op. 76, no. 1-3 ($w/12=z)
A0Aフィールド:
Pagh-Paan, Younghi―Manuscripts―Facsimiles ($w/12=c)
典拠標目を訂正した場合, それが大きな変更であれば旧標目形をフィールド
Exx に移します. このとき Exx のコントロール・サブフィールド$w/12のコードが
「e」 にセットされます.
A5Aフィールド: Overtures,
D major, no. 22
改正A5Aフィールド: Overtures, TWV 55:D 22, D
major
新規E5Aフィールド: Overtures, D major, no.
22 ($w/12=e)
Toccata MARC オンライン目録システムの表示
Overtures, TWV
55:D 22, D major <a85033987>
UF: Overtures, D
major, no. 22 [旧標目]
参照標目 (Exx) の訂正ではこのコードを使用しません.
A5Aフィールド: Sonate
meñthodiche. N. 1
E5Aフィールド: Sonatas,
flute, continuo, G minor
改正E5Aフィールド: Sonatas, flute, continuo,
TWV 41:g3, G minor ($w/12=z)
典拠レコード中でそのフィールドを個別化するための識別番号. 3桁の十進数.
フィールドのデータが翻字されたものである場合に, その翻字システムを示すアルファベット1字コード.
a |
ISO 翻字表 |
b |
その他 (ISO と同一でない全ての翻字方式) |
c |
多重翻字方式: ISO またはその他 |
x |
適用外 |
y |
翻字していない |
A0Aフィールド:
Tsugawa, Masahiko, 1940- ($w/16=c)
F00フィールド: '88タレント名簿録 <津川雅彦;
S15.1.2生>
A1Aフィールド:
Takarazuka Kagekidan ($w/16=x)
F00フィールド: LC
Name auth. n 82010728 (RETRO), DLC
82.03.26
3文字のブランク.
件名標目/参照またはシソーラス・タームを定めるために用いた, 件名システム/シソーラス規則を示すアルファベット1字コード.
a |
LCSH (Library of Congress subject
headings) |
b |
LCシソーラス/ジャンル・ターム |
j |
NDLSH (国立国会図書館件名標目表) |
m |
Toccata MARC日本語件名標目 |
t |
Toccata MARC 日本語シソーラス/ジャンル・ターム |
x |
適用外 (件名またはシソーラス/ジャンル・タームではない) |
A0Aフィールド:
Pagh-Paan, Younghi―Manuscripts―Facsimiles ($w/20=a)
A4Aフィールド:
Radio plays ($w/20=a)
A4Kフィールド: ラジオ劇 ($w/20=m)
統一タイトルの参照で, 著作者とのリンクを禁止する特別処理を行なうかどうかを示すアルファベット1字コード.
# |
特別処理は行なわない |
u |
直接の標目として著作者とのリンクを行なわない |
t |
著作者+タイトル形の参照でフィールド002とのリンクを行なわない |
その典拠レコードと関連する典拠標目の存在を示すアルファベット1字コード.
a |
関連標目 |
b |
広義標目 (または上位概念): 件名標目またはシソーラス/ジャンル・ターム 前の名称: 固有名 |
c |
狭義標目 (または下位概念): 件名標目またはシソーラス/ジャンル・ターム 後の名称: 固有名 |
d |
アクロニム (略語) |
f |
原作 |
x |
適用外 (関連標目の関係なし) |
Toccata MARC オンライン・システムの詳細表示
件名またはシソーラス/ジャンル・ターム典拠レコード
a RT:
b BT:
c NT:
名称/統一タイトル典拠レコード
a RT: [表示情報]
b RT: [表示情報] (前の標目)
c RT: [表示情報] (後の標目)
f RT: [表示情報] (原作)